未去勢のオス犬と一緒に暮らしていて、すぐに不都合を感じるという飼い主はあまりいないでしょう。
確かに手術の適齢期である半年齢までの生活において、未去勢であることは通常何の問題もありません。
しかし、未去勢であることがトラブルの原因となるのはもう少し後のお話です。
実際にトラブルに遭遇した時になってから「去勢手術をしていれば良かった」と感じる飼い主は少なくはないのです。
今回はそのような未去勢のオス犬が遭遇する可能性のあるトラブルについてご紹介致します。
攻撃行動によるトラブル
愛犬が他の犬に噛まれたという事で動物病院に来院されるケースは珍しくありません。
噛んだ側、噛まれた側の飼い主が一緒に来院されることも多く、加害者側の飼い主は当然決まりが悪い思いをされていることでしょう。
これらは
目の外傷や手足の骨折など、怪我の具合によって大きな問題に発展することもあります。
また、我々は犬だけではなく、人に対しての攻撃行動によるトラブルに遭遇する事もあります。
散歩中通りかかった人を噛んでしまった。
このような場合獣医師には、被害を与えた犬が重篤な感染症を保持していないか判断する役割があるからです。
実際には犬の攻撃性は「未去勢である」ことが全ての原因ではありません。
しかし一方で、雄性ホルモンが犬の攻撃性と関わっているとは考えられており、威嚇行動や攻撃行動は未去勢のオス犬で強くみられる傾向にあります。
少なくともこのようなトラブルでは、「未去勢である」ということが、被害者に良い印象を与えないことは確かでしょう。
マウンティングによるトラブル
犬友達とのお付き合いで飼い主に最も嫌われる行動の一つがこのマウンティング。
相手の犬の上に乗ったり、前足でガッシリしがみついて、交尾の様に腰を振ります。
マウンティングは性的な意味で行うこともあれば、支配行動として行うこともあります。
この行為も未去勢のオス犬だけが行うわけではありませんが、やはり性欲や支配欲はオス犬で強くみられます。
愛犬がマウンティングをされることはやはり気持ちの良いものではありませんし、未去勢であれば「ちゃんと去勢してよ」とお友達に指摘されてしまうこともあるかもしれません。
前立腺肥大によるトラブル
未去勢のオス犬で良くみられる病気の一つが前立腺の病気です。
中でも雄性ホルモンの影響による前立腺肥大は、高齢のオス犬で頻繁に遭遇します。
尿が出づらい。尿に血が混じる。便が出にくい。などの症状が一般的です。
前立腺肥大はさらに会陰ヘルニアという病気の原因となり、生活の質(QOL)の大きな低下を招きます。
そのため、前立腺肥大によって排尿や排便に関する症状が出てきているのであれば、精巣の摘出手術による治療を行うべきです。
ただし、先に書いたように前立腺肥大が問題となるのは高齢犬です。
麻酔のリスクが高くなる高齢期になってからの手術に直面した時、飼い主が「若いうちに去勢手術をしておけば…」と感じるのは想像に難くありません。
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腫瘍に関するトラブル
精巣腫瘍や肛門周囲腺腫など、去勢手術で予防のできる腫瘍もあります。
これらも
多くは高齢犬で発生する病気で、悪性腫瘍においては無論命に関わる問題となります。
麻酔のリスクが高くても手術に望まざるを得ない場合もありますし、無事に手術を乗り切ってくれても術後後遺症や転移病巣に悩まされる場合もあります。
また手術費用などの治療費や通院によるストレスは飼い主の負担となることでしょう。
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まとめ
去勢手術を行わないというのは、決して悪いことではありません。
ただし、今回ご紹介したように、未去勢であることがトラブルの原因になることは少なくないのです。
「何となく」手術をしなかったことが、後悔に繋がる場合もありますので、手術を行うかどうかはしっかりと飼い主が判断してあげて下さい。