避妊手術が無事終わり、獣医師からいろいろと説明がありますよね。 しっかり説明されても手術後はご自宅でどうしたらいいのか、実際不安になると思います。 気になることの一つに、「抜糸」があるでしょう。
そして、メス猫の避妊手術には、
①抜糸が必要な場合
②抜糸が必要ない場合
があります。 どちらになるかは、動物病院のそれぞれの方針や猫の状態によって変わってくるでしょう、ご説明していきます。
手術後1週間~10日後くらいがいいでしょう。傷口が大きい場合は2週間くらい経過をみないといけない可能性もあります。 手術部の皮膚がくっついてくるのに、必要な期間です。
抜糸は痛くありません。猫本人に聞けないので、想像ですが。 抜糸自体は、糸を切り、切った糸の端を引っ張ってぬくというだけです。糸が食い込んだり、癒着していなければ、出血もなく、痛みを感じることはないでしょう。 また、「抜糸に麻酔が必要なのか?」と聞く飼い主さんがいらっしゃいますが、基本麻酔は必要ありません。猫が協力しておとなしくしてくれれば、抜糸は数分で終わる処置です。
手術部の皮膚のくっつき、癒合(ゆごう)が不完全なため、傷口が開きます。しかし、傷口が開いてもその下のお腹の筋層が見えるような状態でしょう。 そもそも、メス猫の避妊手術の最後の仕事「縫合」は、お腹の腹膜と筋層の縫合を行った後に、皮膚の縫合を行います。 もし、手術の傷口をなめてしまい糸が取れても、内臓が見えるようなお腹の中まで見えるほど傷は開きません。もちろん皮膚を再び縫合する必要がありますが。 そのため、傷口をなめるようであれば、抜糸までの期間は包帯もしくはエリザベスカラーを着ける必要があるのです。
猫にとって、エリザベスカラーや着なれない包帯をつけることは、大きなストレスです。 しかし、傷口をなめて抜糸をしてしまい、再縫合になることも大きなストレスです。 一緒に猫といられる時間はエリザベスカラーをはずして様子をみてあげることも可能です、獣医師に相談してみましょう。
抜糸が数日遅れる程度であれば、問題ありません。飼い主さんも仕事や予定で、ぴったりと1週間後に動物病院に受診できない場合もありますよね。 しかし、抜糸の予定の時期から何週間も、例えば予定から1~2週間も経ってしまった場合は、問題が生じてくる可能性があります。 手術部の傷口はくっついていますが、縫合している糸に皮膚が反応してもりあがり、糸が皮膚に食い込んでいきます。 食い込んでしまった糸を抜糸するためには、糸をほじくり出したり、引っ張らないといけないので、その際に出血したり、かゆみが伴うことがあり、抜糸後も経過をみなければならないでしょう。
メス猫の避妊手術の皮膚の縫合で比較的多く行われる方法として、皮内縫合(ひないほうごう)というものがあります。 時間がたつと皮膚などの組織に吸収されて溶ける糸、吸収糸(きゅしゅうし)を使用し、皮膚の中で縫合するため、皮膚の外に糸が出ないように縫う方法です。 この場合、糸が溶けるため、抜糸はいりません。 猫はストレスを感じやすい動物です。 ①で抜糸は数分で終わると記載しましたが、その数分でも、お腹の手術部を確認するために仰向けにされるということに耐えられない仔もいます。 そんな猫たちのために、皮内縫合は小さなストレスも軽減させようと行っている方法でもあります。 ちなみに、この場合でも傷口をなめると、皮膚の癒合が遅れるため、念のために包帯やエリザベスカラーの装着をおすすめしています。
皮膚の縫合の方法の選択は動物病院で考え方や違いがありますし、飼い主様が抜糸のない縫合が希望でも、手術の内容によってどうしても傷口が大きい症例などは難しい場合もあります。 どちらの方法でも、その猫にとって一番合った方法を選ぶことが大切です。手術前から獣医師とよく話し合っておきましょう。