ホルモンバランスが崩れることによって毛が抜ける=脱毛症というのは犬ではしばしばみられる病気です。
毛質がゴワゴワと悪くなってきた。
かゆみもないのに毛がどんどん抜ける。
左右対象に毛が薄くなっている。
このような時に、獣医師からホルモンの影響を指摘されることがあるかもしれません。
ホルモンバランスが崩れる??
避妊手術したのがいけなかったの??
そのような不安を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
実際には、このようなホルモン性(内分泌性)の脱毛の原因は様々で、去勢や避妊の手術が直接的なきっかけとなるケースは多くはありません。
また、未去勢、未避妊が原因となり脱毛が起きるということもあります。
ホルモンの影響による脱毛って?
動物病院で犬が「ホルモンの影響による脱毛」と言われた場合、精巣や卵巣を中心に作られる性ホルモンの病気を指していることはほとんどありません。
犬では性線以外の内分泌器官から分泌されるホルモンによる脱毛症の方が一般的だからです。
特に問題となる事が多いのは、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンや、副腎から分泌される副腎皮質ホルモンの影響による皮膚の病気です。
いずれも、皮膚だけではなく全身に影響を与える病気で、糖尿病など他の病気の原因となることもあります。
また、まだ詳しい原因はわかっていないのですが、成長ホルモンの失調が影響をしていると考えられている脱毛症も存在します。
病気についてお話をした時に、「ホルモン」という言葉から性ホルモンをイメージされる方もいらっしゃいますが、これらは避妊去勢手術が直接の原因ということではないのです。
性ホルモンによる皮膚の病気とは?
性ホルモンは皮膚の表面、脂を分泌する腺および毛包(毛根を包む組織)に影響を与えます。
そのため、性ホルモンのバランスが崩れることで、確かに脱毛が症状としてみられることがあります。
通常、性ホルモン性の脱毛はお尻の周りや大腿の裏から始まり、腹部、胸部へと広がります。
脱毛部はシミのように黒ずんだり、厚く硬くなってくる場合もあります。
このような性ホルモン性の脱毛は、去勢や避妊手術をしていない高齢犬で稀にみられます。
オス犬の場合
オス犬の場合は精巣の腫瘍が原因となることで発症するのが一般的です。
片側の精巣が腫れていたり、お腹の中で腫瘍化していないかなどを確認します。
メス犬の場合
メス犬でも性ホルモンによる脱毛は卵巣の腫瘍や子宮の病気が主な原因となります。
そのため、不規則な発情の繰り返し、外陰部の変化や貧血など、全身的な症状を伴うことが多いです。
去勢、未避妊だと皮膚病になりやすいの?
性ホルモンによる皮膚の異常は頻繁にみられる病気ではありません。
また、上に書いたように、精巣や卵巣の異常に伴うことがほとんどです。
そのため、動物病院でも積極的に性ホルモンの検査を行うことはありません。
ホルモンによる皮膚の病気を疑う場合、通常、甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンの測定を優先して実施することが多いでしょう。
去勢避妊手術は皮膚に影響を与えるの?
去勢避妊手術後、湿疹がでた。皮膚が痒くなった。今までこんなことなかったのに。という話を聞くこともあります。
ホルモンは確かに体に様々な影響を与えます。
また、まだわかっていないことも多く、全く影響がないとは言い切れないかもしれません。
しかし、個人的には、皮膚のトラブルは去勢避妊手術を一番の原因とは考えずに、丁寧に他の病気を除外していくことで有効な治療に近づけると感じます。
例えば、若い犬ではアトピーなどの皮膚の病気ではないかしっかりと判断する必要がありますし、高齢犬ではやはり甲状腺や副腎機能の評価を十分に行うべきでしょう。
ただ、避妊去勢手術により、毛質の変化がみられることがあるとは言われています。
こなような毛質の変化は特にミニチュアダックスで良くみられるようです。
まとめ
避妊去勢手術にはメリットもあれば、勿論デメリットもあります。
ただし、手術後の体質の変化に対しては、手術が原因だと直ぐに決めつけず、他の病気や成長に伴う体質の変化にもしっかりと注意を払うことが重要です。