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去勢が予防につながる『会陰ヘルニア』って?

2017.07.24
オス犬の去勢

皆さんは「会陰ヘルニア」という病気をご存知ですか? 「ヘルニア」という概念は、体のある組織が元の位置から逸脱して他の位置に「脱出する」ことを指します。例を挙げると脳ヘルニア、臍ヘルニア、横隔膜ヘルニア、鼠径ヘルニア、椎間板ヘルニア、等々。様々な部分で起こるのですが、今回取り上げる「会陰ヘルニア」はお尻の肛門周囲に発生するヘルニアのことを指します。

この病気はタイトルにもあるように、去勢手術がこの病気を予防するために大きな効果をもたらします。今回は、去勢手術が発生予防に大きく貢献している、この会陰ヘルニアに注目してお話ししていきたいと思います。

会陰ヘルニアという病気

「会陰ヘルニア」は人ではごく稀であり、多くはオス犬に見られる病気です。 そして、圧倒的に去勢していない中高齢のオス犬に多いという事実があります。 しかしこれは偶然ではなく、この「会陰ヘルニア」の発生が男性ホルモンに大きく影響を受けているというはっきりとした理由が証明されているからなのです。 この病気の症状を見ていきましょう。

排泄障害

この排泄障害とは、排便や排尿がしづらくなり、ひどくなると自力で全く出せなくなることもあるとても辛い症状です。会陰部に逸脱するもの(ヘルニアとなるもの)が何かによって症状が変わります。通常は直腸が会陰部に逸脱して排便困難になるケースです。また、膀胱や前立腺が逸脱して排尿困難を引き起こしてしまうことがあり、これは排便困難よりも緊急性が高く死亡リスクが格段に上がります。

会陰部の腫脹

会陰部の腫脹は、会陰ヘルニアにおける外貌上の特徴です。 犬は被毛に覆われていますのでわからない場合もあるのですが、多くの場合は「お尻が腫れている」と気がつきます。

会陰ヘルニアの治療法とは

完治させるための治療法は、外科治療しかありません。 外科治療が選択できない場合にのみ内科治療を行いますが、排泄障害に終わりが見えないのは、 犬のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を下げてしまうだけでなく、飼い主さんの精神的負担も大きいのです。 外科治療の方法をご紹介します。

自身の筋肉で修復する方法(筋肉フラップ)

元々存在するヘルニア周囲の筋肉でヘルニアの穴を塞ぐ方法です。 一般的に多く用いられる方法ですが、どの筋肉を使うかはヘルニアの状況で異なります。

人工物(メッシュ)にて修復する方法(メッシュ法)

人の鼠径ヘルニアなどの手術ではごく一般的に用いられている方法で、人工糸を織物状に形作ったもの(メッシュ)で修復します。

その他

・精巣の総漿膜で修復する方法 ・腸管をお腹の中に固定する方法 などがあり、 1つの方法にとどまらず、いくつかの方法を複数合わせて修復する場合も多くあります。 要は、病態はある程度同じような症状であっても個体別に手術を組み立てないと難しい手術だ、とも言えますね。

まとめ

いかがでしたか? 辛い症状と、一度発症すると外科治療しか完治させる方法がないこの病気。 発症するリスクも少なくないこの病気を防ぐには、去勢手術がとても効果的な予防法になるのです。去勢手術の検討材料にしてみてください。

 
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