メス犬に対する避妊手術の目的は、昔と今で少し違っています。
ひと昔前(30年くらい前まで)は、野良犬という存在があり、また犬を自由に放し飼いにしていた家も珍しくはありませんでした。
そのため、自宅で飼っているメス犬がいつの間にか妊娠していた、気がついたら子供が産まれていた、なんてこともあり、交配を望まない場合は避妊手術を受けましょう、なんてよく言われていたものです。
でも今は、市街地で野良犬を見つけることは皆無となり、飼い主さんのマナーが守られ適当に放し飼いしている家庭もほぼ見られなくなりましたよね。
それでは、今メス犬に行われる避妊手術の目的ってどんなものなのでしょうか?
避妊手術が一般的に勧められる3つの理由をお話ししましょう。
メス犬は1年に2回程度発情期というものが訪れます。
人の感覚に当てはめますと、約半年に1回生理が来る、ということですね。人ほどではありませんが、メス犬も体調が不安定になったりすることもあります。
偽妊娠と呼ばれる、あたかも妊娠しているかのような兆候が発情後に認められることもあるのです。おっぱいが張って乳汁が出ることも多く、ぬいぐるみを子供と思って育てている場合もあります。
そこに本能的にエネルギーを使ってしまうのが身体的ストレスにつながることはこれらでお分かりですよね。
手術をすることでこういった体やホルモンのサイクルがなくなり体調が安定化し、長寿につながっていると言われているのです。
1でも述べたとおり、性ホルモンの影響は体調に大きく影響します。
若いうちは体力や元気もあり、体調の変化が現れにくいのですが、7歳以降の高齢期に入ってくると少しずつ変化が現れます。
その頃から性ホルモンの影響による病気の発症リスクが高まり、特に「子宮蓄膿症」と呼ばれる子宮内に膿汁が溜まって死の危険を伴う病気にかかりやすくなります。
また、「乳腺腫瘍」という乳房の腫瘍発症リスクも高まります。
ただし、犬の乳腺腫瘍は統計学的に「初発情を迎える前(約1年未満)に避妊手術を行えば99%発症リスクを抑えることができる」とされています。
よって6ヶ月齢から1歳の間に手術を行ってあげることがタイミングとしてベストなのです。
もちろん子宮蓄膿症も発症前に避妊手術(子宮卵巣摘出)を行ってさえいれば発症することは絶対にありません。
犬の発情期が年に2回程度来ることはお話ししましたが、それは年に2回出血が起こるということになります。
オス犬の場合は特定の発情期間というものが無いため気にしなくても良いのですが、メス犬は出血が7〜10日間程度続きます。
出血量が少なくて犬が自分で舐めてしまうので特に気にならない、なんていうケースもありますが、一般的には床やカーペットなどに血が垂れます。
おむつなどでその時期をしのぐ場合もありますが、ウンチやおしっこでお尻周りが不衛生となり、よくありません。
いちいち取り替えるのも大変です。日中仕事で飼い主さんがいない場合はどうしようもありません。