オス犬を飼っていて、睾丸が片方しかない、もしくは二つともない、ということを動物病院で初めて指摘されたことってありませんか?
ペットショップやブリーダーから購入した際に月齢が2ヶ月程度だと、小型犬種の場合わからないまま販売されるケースもあるかと思います。販売の際に獣医師の健康診断がついているところもあるので、ちゃんと指摘されて購入するケースもあるようですが、それがないとただでさえ分かりづらい問題を確認することができず、見逃されてしまうことも多くあるのです。
精巣は生まれたばかりの時は腹腔内に存在しており、生後30日頃までに精巣下降と言って陰嚢内に移動して納まるという変化を遂げます。
陰嚢内に納まったのちに体の成長とともに精巣もはっきりと大きくなっていくのです。
このオス犬の成長過程で生後30日を明らかに過ぎても陰嚢内に移動されてこない状態を「停留精巣」と言います。
これは2つの精巣のうち、片方だけの場合もあれば両方とも移動してこない場合もあり、劣性遺伝という遺伝的問題が原因であると言われています。
この原因を知れば、停留睾丸がある場合はその異常を遺伝させないために、その仔は交配させることは控えることが望ましいことはお分かりですよね。
動物病院や販売時に停留精巣という状態です、とあらかじめ指摘されていた場合、皆さんどうしますか?
そんなことわからない、とおっしゃる方が大半かと思いますので、まずは停留精巣であった場合にどのような問題が発生するのかお話したいと思います。
「中〜老齢期になって腫瘍化することがある」
ひとえにこれに尽きます。
精巣腫瘍にはいくつか種類があるのですが、通常の位置にある精巣に比べて停留精巣の場合、12倍以上の腫瘍発生率があると言われています。
中でも「セルトリー細胞腫」という腫瘍は悪性で、しかも腹腔内に存在していた場合に発見が遅れてしまうケースがあるため注意が必要です。
獣医師でも症状が出るまでは初期段階で指摘することはほぼ難しく、骨髄の機能肥不全など症状が出てしまうと治癒は困難となってしまいます。
そのため、獣医師は口を揃えて、
「停留精巣は見つけた時に早めに摘出手術を検討してください」
と言うのです。
停留精巣の手術は、精巣がどこに存在しているかで術式が変わります。
通常は2通りで、腹腔内と鼠径の2か所です。
腹腔内にとどまっている場合はもちろん開腹手術となります。
傷口の大きさは、それほど大きくはならないのですが、精巣を探すために個体によって異なります。また、めったにないことですが、精巣が未形成である場合もあるので探したけれどなかったという場合もあります。
また、鼠径に精巣がとどまる場合は、開腹まではせずに鼠径部分で膨らんでいる精巣を頂上の皮膚を切ることで摘出可能となります。
手術時間も体にかかる負担も鼠径にある方が楽なのですが、
腹腔内の停留精巣のケースは上記でご説明した通り、腫瘍化した場合の発見が遅れる場合が多いので手術はした方が良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?
去勢なんかしなくても大丈夫、と思ってはいても、実は停留精巣だったとしたら様子を見てもいられませんよね。
ぜひ一度動物病院でちゃんとした位置に精巣があるのか診てもらいましょう。