メス犬のお腹をなでていて、ふと、触り心地に違和感を感じたことはありませんか? いつもはなかった部分にできものがある、それは乳腺腫瘍かもしれません。
犬の乳腺は胸からお腹にかけて全体にあり、乳腺腫瘍もお腹にできることもあります。 できものの形は様々で、3㎜大の米粒大の小さなものから3㎝大のピンポン玉大の大きなものまでのこともあるでしょう。 さわっても痛がることはなく、飼い主さんが知らない間に大きくなっていることもしばしばあります。 ただ、乳頭をできものと勘違いしてしまって心配されている飼い主さんもいらっしゃいます。
犬の乳頭は8つ~10つあり、左右が対称になって位置する乳頭もあれば、奇数の乳頭で非対称の場合もあります。とくに非対称の仔の場合、できものと間違える方が多いようです。
腫瘍は一般的に、6・7歳以上の高齢犬にみられます。乳腺腫瘍も同様に高齢期にみられることが多いでしょう。 とくに避妊手術をしていない高齢のメス犬が発生することが多いです。メス犬の発情は約6か月齢~1歳の時期にスタートし、年に1~2回のペースで起こります。 その1回目の発情の前に避妊手術を行うのと、数回の発情の後に避妊手術を行うのとでは、乳腺腫瘍になる確率は大きな差が出てしまいます。 ただ、乳腺腫瘍に女性ホルモンが関係するからと言って、オス犬がならないというわけではありません。メスよりは確率は低いですが、乳腺腫瘍が発生する可能性はあります。オス犬の飼い主さんも気を付けてあげましょう。
犬の乳腺腫瘍は確率として、50%が良性腫瘍、50%が悪性腫瘍と言われています。 見た目では、どちらかはわかりません。また、犬の乳腺腫瘍は、できものが見つかった時に行う検査で一般的な「細胞診検査」でもどちらか確定するのは難しい腫瘍です。 細胞診検査とは、できものに針を刺し細胞を採取して顕微鏡で確認する検査です。確定するには、腫瘍を手術で切除し、できものの塊を「病理検査」で調べなければわからないことが多いのです。 手術をしてみないと、良性なのか悪性なのかが、わからないということです。 しかし、一つだけ良性か悪性なのか、ふるいにかける方法があります。 それはできものができてから大きくなるまでの「速度」です。はじめは米粒大だったのが、1か月も経たないうちにピンポン玉くらの多きさになっている、という場合は悪性腫瘍の可能性があります。悪性腫瘍は大きくなる速度が速いため、あっという間に大きくなるでしょう。 また、見つけた時点で大きさが3㎝以上の場合も、悪性腫瘍の可能性があります。できものが見つかったなら様子を見ずに早めに動物病院に相談してみましょう。
治療方法は、腫瘍の切除手術です。 手術は、できものの周辺の皮膚数㎝とともに切除します。目に見えない腫瘍細胞が周辺の組織にも存在していることがあるためです。 また、できものが数か所にある場合や付近のリンパ節に転移している恐れのある場合は、胸からお腹にかけての全ての乳腺と皮膚を切除しなければならない手術になる可能性もあります。 どちらにしても、飼い主さんが思っていた以上に大きな手術になることが多いでしょう。 また、乳腺腫瘍は女性ホルモンと関連があるため、切除手術とともに避妊手術も必要です。
早い段階で見つけるためにも、日ごろから犬の体を触って確認しておきましょう。 また、出産を希望しないのであれば、予防のためにも避妊手術も若いころに行っておくこともお勧めします。