寒い冬が終わり、春先のこのあたりからたいていの動物が「生殖行動」=「発情行動」が起こり始めます。 当然、家族として飼ってらっしゃる犬たちも、いまだに人間よりも多くの自然の本能を多く残しているために、発情にからんだ原始的な行動がこの時期多くみられるようになります。 メス犬を飼われていらっしゃる多くの飼い主様は、この時期の特有の発情行動に多く気づくかもしれませんが、オス犬もこの時期に行動が変わるケースも多くあります。
去勢していないオス犬は、メス犬の後を追っかけたり、マウンティングなどを常に行っているため、「発情期っていつ?」という感じかもしれませんが、春先のこの時期のオス犬はいつもよりそわそわしたり、イライラしたりしていることが多くあります。 これは、発情期のメス犬の尿に混じるフェロモンのせいだと言われています。 フェロモンというのは、ごくごく簡単に言えば、体内で作られる化学物質で、ほかの個体の行動様式に影響を及ぼすものの総称です。 昆虫類のフェロモンはよく研究されており、ミツバチをはたらきバチにしてしまう女王フェロモンや、ゴキブリの集合フェロモンの話などはどこかで聞いたことがあるかもしれません。
哺乳類のフェロモンについては不明な点が多く、まだ研究が進んでいないのが実情ですが、発情期のメス犬の尿には、メチル―P-水酸化ベンゾチエートと呼ばれるオス犬特有の行動を増長させるフェロモンが含まれていることがわかっています。 この化学物質は、通称アミノ安息香酸エチルという化学物質に属しており、強力な脳内麻薬の効果が起こることがわかっています。 こういった脳内麻薬が、オス犬、特に去勢をしていないオス犬に影響することにより、メス犬に対する興味を増長させ、この時期の生殖行動を活発にします。 このため、このフェロモンの影響を受けた犬は、ほかのオス犬に攻撃的になり、イライラ、ソワソワしだすのです。
自分の家で飼ってらっしゃる犬は、家の中だけで飼っているから影響ないと考えてらっしゃる飼い主様もいるかもしれませんが、この犬の発情フェロモンは、2km先のオス犬まで影響させることが知られています。 ですので、よっぽどの山奥で飼われている犬でなければ、メス犬から出る発情フェロモンの影響からま逃れることはできません。
発情行動は自然に起こる行動ですから、健康を害することはありません。 ただ、犬と一緒に住んでいると、困った行動に悩むケースも出てくるでしょう。 もし、去勢手術によってそういった行動が抑えられるのであれば、一度検討してみるのもいいかもしれません。