まだ犬の去勢を行っていない方、これから犬の去勢を考えている方、ご自分の犬の精巣を触ったことはありますでしょうか?触った事のない方は、まずは触ってみてください。
袋(陰のう)の中に精巣はきちんと2つありますか?
これは当たり前の質問のようですが、オス犬の中には、遺伝性の病気により、精巣が陰のうの中にない場合があります。
これを「潜在精巣」(または陰睾)といいます。
犬種にもよりますが、オス犬のおよそ1.7%といわれており、他の動物種より発生の多い病気です。
飼い主が気づいていないことも多く、
病院へ去勢手術に来たものの「精巣が見あたらない」というケースも珍しくはありません。
では精巣はどこにあるのか?
精巣は、卵巣と同じく胎子のときにはお腹の中にあります。
妊娠の終わり頃、もしくは生まれてすぐの段階で、テストステロンというホルモンの刺激により、精巣はお腹の中を少しずつ移動していきます。
通常は生後2週間くらいで完全にお腹の中を出て、陰のうの中へと入ります。この
精巣の移動を「精巣下降」といいます。
しかし、この「精巣下降」が上手くいかず、お腹の中や、移動の途中で精巣が留まってしまうことがあります。生後8週齢までに、精巣が陰のうの中に入っていない場合には、「潜在精巣」と診断されます。
潜在精巣は精巣がお腹の中に留まってしまう「腹腔内陰睾」と、内股のところに留まってしまう「鼠径陰睾」の二つに大きく分けられます。
潜在精巣は片側のみの場合もあれば、両側の場合もあります。
潜在精巣の抱えるリスク
精巣が精子を作るためには、お腹の中では温度が高すぎます。
そのため、陰のうの中に入っていない精巣には生殖能力はありません。片側のみの潜在精巣であれば子どもを作ることはできますが、遺伝性の病気のため、繁殖は慎重に考えてあげるべきです。
また、正常に陰のうの中に入った精巣と比べると、
正しい位置にない潜在精巣は腫瘍になる確率がずっと高いことがわかっています。これは犬では正常のおよそ13倍といわれています。
お腹の中にある精巣は腫瘍化しても、外見上は変化がないため、発見が遅れてしまうケースも多いです。
これらの点から、潜在精巣の場合、精巣の摘出手術が推奨されています。
通常の去勢手術と潜在精巣の手術の違い
正常に陰のうの中にある精巣と、潜在精巣では手術による摘出の方法も異なります。
腹腔内陰睾の場合は開腹手術により精巣を摘出しなくてはなりませんし、鼠径陰睾においても通常の手術創とは別に、皮膚の切開が必要な場合もあります。
潜在精巣は発達も未熟です。特に体の小さな犬では、去勢手術の適齢期である6ヶ月齢を過ぎた頃でも、まだ精巣が小さく発見が困難な事もあります。
そのような時は、手術をスムーズに行うためにも、性的にも成熟する1歳くらいまで手術の時期を遅らせた方が良いかもしれません。
手術の方法やタイミングは、獣医師としっかりと相談をすることが大切です。
手術の料金についても、通常の去勢手術よりも費用がかかります。通常の去勢手術と比べると、小型犬の鼠径陰睾だと1~2万円程度、腹腔内陰睾だと2~5万程度は費用が高くなることが多いです。
犬の大きさや、左右の精巣の位置によっても料金は異なることがあります。また、腫瘍化していない潜在精巣は保険適応外の病気になります。
手術費用についても事前に獣医師にきちんと説明をしてもらい、確認をしておくようにしましょう。
まとめ
潜在精巣はそのまま年齢を重ねることで、腫瘍化の危険が高まります。
しかし、これは早期の外科手術によって未然に防いであげることのできる病気です。いつ、どのような手術を受けることが出来るのか、まずは動物病院に相談してみて下さい。