「飼い主の足にしがみついて、腰を振る」「家に訪れたお客さんに吠えて、威嚇する」
去勢手術をしたら無くなると思っていた、このような犬の行動に戸惑っている方もいるでしょう。
しかし、マウンティングや攻撃行動は去勢手術だけで全て解決できるものではないのです。
マウンティングの意味
飼い主の足や、お気に入りのぬいぐるみに、前足でガッシリしがみついて、交尾の様に腰を振る犬の仕草。
これは「マウンティング」といわれ、一見すると性的な興奮と考えてしまうのですが、
犬にとっては他にも意味があると言われています。
性行動・力の誇示・遊びやコミュニケーション
犬が欲求不満だけで、人にしがみついたり、腰を振っているとは決めつける事ができません。
性的興奮以外にも、
相手より優位にたっていることをアピールするための、支配行動としてもマウンティングは行われる場合があります。
そのようなときは、お互いの顔に緊張が走りますし、相手の背の上にあごを乗せ牽制したり、相手を抑え込もうとムキになったりします。
また、
犬たちの間では遊びやコミュニケーションの手段としても、マウンティングが行われていると考えられています。これらはメス犬や同性間でも行われます。
飼い主へのマウンティングは、性的な興奮よりも、こうした遊びの中での興奮により行われる事が多いと考えられています。
一方で、発情期のメス犬に対するマウンティングや、射精を伴うようなマウンティングの場合は、性的意味が強いと判断できます。
攻撃行動の意味
攻撃行動にも、性的意味が強い攻撃性と、そうでない攻撃性があります。
メス犬を取り合うために行われる、
オス犬へ対しての攻撃は、雄性ホルモンと関わりの強い攻撃性です。
しかし、たとえば家(テリトリー)に対する防衛本能、不安や恐怖からくる咬みぐせや、獲物を狩るための捕食など、犬の攻撃性には他にもいくつか原因があります。
どんな時になぜ攻撃行動を起こすのかをしっかりと考えてあげなければいけません。
去勢手術の効果
雄性ホルモンに関連した行動であれば、去勢手術をすることで改善が望めますが、習性や性格、環境が関わっている場合、それだけでは改善されない場合が少なくはありません。
つまり、マウンティングを遊びとして習慣化してしまった犬や、恐怖感などから咬みつく犬では、去勢手術をしても変化があまり期待できないかもしれないということです。
しかし、実際にオス犬を去勢すると攻撃性が弱まるという報告はあります。
これは、
精巣や副腎から分泌されるテストステロンという雄性ホルモンの量が、犬の攻撃性と関わっていると考えられているからです。
性的な問題行動以外においても、支配欲や攻撃感情のコントロールがしやすくなれば、問題行動の解決には大きく役立つことでしょう。
また、
早期の去勢手術は、マウンティングや攻撃行動を犬が学習し、習慣化することを防ぐかもしれません。
まとめ
マウンティングや攻撃行動などが認められる場合は、去勢手術とともに、
環境の改善やしつけの見直しが必要です。
去勢手術が犬の性格を変えるのではなく、感情をコントロールしてあげるための、一つの手段として考えてあげると良いでしょう。
オス犬の実生活はさまざまな制約を受けています。自然な繁殖という行為は自由にできるわけではありませんし、その欲求不満が問題行動や攻撃性につながることもあります。
去勢手術はオス犬の生活を、より快適なものにしてくれるかもしれません。