すべてのメス犬に起こるわけではありませんが、避妊手術をしたメス犬の飼い主様から、「尿に異常がある」というご相談を受けることがあります。 一口に尿の異常とは言っても、原因は様々ありますが、今回はよくある代表的なご相談をご説明させていただきます。
この手の術後すぐの異常は、よくあるケースだと思ってください。 術後の痛み、ストレスなどの影響での一過性のものであることがほとんどです。 特に無処置で経過を見ていただいても問題がないことがほとんどです。
原因は2つの可能性が考えられます。 一つ目は単純な膀胱炎です。 ストレスがある上に、いつもと排尿の時間などがずれているケースもありますので、膀胱炎を起こしても、何ら問題はありません。
もう一つの理由は、手術の際には子宮を縫合糸で結紮するのですが、その糸が子宮の内側に入りこんでしまっているケースです。 手術中に気づけるものではないので、血尿が出始めて初めて判明することがほとんどです。 ただし基本的にはどちらのケースでも、抗生剤や止血剤の治療で速やかに回復しますので、尿の色がおかしいなと思ったら、慌てず執刀医の先生にご連絡していただければと思います。
始めに述べておきますが、このようなケースは実際にあるのですが、現在の獣医医療で、しっかりとした原因が確定されているわけではないので、おそらくそうであろうという推測でしかありません。 症状としては、寝ているときや、体を持ち上げた時に尿がそれなりの量で漏れ出すといったものです。 尿漏れがあったことは本人も気づいていることが多く、尿が漏れた後など、陰部を舐めるしぐさが見られることもあります。
一つ目の考えられる理由としては、通常、卵巣をとった子宮はどんどん退縮していきます。 それが過度に起こった場合、子宮と、膀胱や尿道は非常に近いところにあるため、尿道の筋肉や膀胱の細胞も同時に退縮をしてしまうことで、排尿をコントロールすることができなくなるということです。 もう一つの理由としては、卵巣摘出後、発情周期に絡むホルモンの量は著しく低下するのですが、その中のエストロジェンというホルモンが、排尿のコントロールをする役目をしているため、その量が低下することによって、尿漏れが発生するということです。 このような避妊手術後の尿漏れの原因を探る有意義な検査方法はなく、一つ一つ考えられる原因を除外しながら治療を進めていくしかありません。 最終的には、ホルモン治療などが必要になるケースがほとんどであり、治療によるデメリットも多く存在するため、無治療で過ごされる方も多くいらっしゃいます。 本人の一般状態にはおおよそ関係がなく、ご自宅でのお世話が困難になるだけと言えばそれまでの話なのですが、尿漏れは飼い主様にとって深刻な悩みの種になりますので、よく担当の先生とご相談をされるべきだと思います。
医療行為と言うのは(医療行為だけではないかもしれませんが)、すべての点でメリット、デメリットも存在します。 あまり知られているような症状はありませんが、避妊手術もデメリットがあると考えられています。
避妊手術を検討される場合は、そのデメリットもしっかりと理解したうえで行うのが理想だとは思いますが、飼い主様が事前に知る方法はあまりないかもしれません。 できれば、こういったブログが、その材料の一つになればと思っています。