よく言われることですが、去勢した後のオス猫は太りやすくなると考えられています。 実際におおよそ2割から3割ぐらいの猫が、去勢後に体重のコントロールが難しくなりますが、原因は実際のところよくわかっていません。 ホルモンバランスが崩れるというのがおおよその意見ですが、すべてのオス猫が去勢後に太るわけでもなく、実際に測定可能な範囲では、去勢後に太る猫と太らない猫のホルモンの数値に決定的な違いを見出すことはできていません。
したがって、原因がはっきりしないため、これといった治療薬もなく、生活習慣を整える以外の方法はありません。 体重が気になるようになったら心がけてもらいたことを獣医師としてアドバイスします。
正直なところ、猫の体重管理はこれがメインとなります。 ただし、食べれば痩せるような夢のようなダイエット食はないので、あくまでも食事から摂取する栄養素を制限していかねばなりません。 最近、人でもダイエットはカロリーのコントロールではなく、糖質、脂肪分のコントロールであると言われています。 猫は、人のような雑食性の動物ではなく、純粋な肉食動物なので必ずしも当てはまりませんが、おおよそ同じようなコンセプトです。 一般的に、肉食動物はタンパク質の栄養要求量が高く、たんぱく質を制限すると様々な栄養的な疾患が現れてきます。 したがって、食事はできるだけ高タンパクなものを選んでください。
若い個体に、カロリーが低いからといって、安易に高齢猫用の食事を与えるのは、上記の理由から避けた方がいいと思います。 そして脂肪分はできるだけ抑えたいところですが、ここに大問題が発生します。 猫にとって脂肪はうま味そのものなので、低脂肪食は基本的に嗜好性がとても低くなります。 最近の良質なキャットフードには、そういった成分ではなく、匂いや噛みごたえなどで嗜好性を増すものもありますので、色々と試してみるのがいいと思います。 しつこいようですが、食べて痩せる食事はありませんので、あせらずゆっくりとやっていきましょう。
これもよく言われることですが、消費するカロリーを増やすこともやせるための一つの方法です。 しかし、猫は自由気ままですし、気づくと常に丸くなって寝ていますから、なかなか運動量を増やすことはできません。 ですので、意図的に遊んであげる時間を増やすとかキャットタワーなど配置するなど、運動量が増えるような「努力を続ける」ことが必要です。
ちりも積もれば・・・なんて言葉もありますので、継続して行ってください。
獣医師として、医療関係者として、体重を管理する上ですべての動物において一番重要なのは、モチベーションの維持であると思います。 人でもダイエットが失敗するのはその方法ではなく、モチベーションが維持できずに挫折してしまうからだと思います。 猫の場合、モチベーションの維持とは、当然のことながら猫のではなく飼い主様のモチベーションのことです。 最初からあれもこれもと熱を入れていると、だんだん疲れてなぁなぁになってしまいますから、ルーチンにできることだけを取り入れてください。 特に、猫は思っているようには行動してくれないことも多く、食事を食べてくれないとか、食べない割にはほかの食事が欲しくて催促するとか、運動も途中でやめてしまうとか、とにかくフラストレーションがとても溜まります。
ですので、食事のコントロールにしろ、運動のコントロールにしろ、飼い主様がまず、継続可能な方法だけ、まずは行うようにしてください。
ダイエットの道は一日にしてならずです。あせらずゆっくりとです。 猫は一度太るとやせさせるのは不可能に近いと思ってください。 太ったなぁと思う前に、意識して体重管理をしていきましょう。