人では「ピル」という名で知られている経口避妊薬がありますが、実は犬にも避妊薬があることをご存知ですか?
犬には手術による避妊だけでなく薬剤による避妊が可能です。これには人のような経口避妊薬ではありませんが、獣医師の手による注射とインプラントという皮膚の下に埋め込む避妊薬の2種類があります。
現在、動物病院で行うメス犬の避妊方法は、大半が子宮卵巣摘出手術による永久的な避妊です。
一方で、子供を産ませたくないのは一時的で、別の機会に子供を産ませたいと希望する飼い主さんに対応するため、犬に対して注射薬などの避妊薬を使用するケースがあるのです。
お腹を切らず、犬に苦痛を与えることなく避妊ができるなんて前もって知っていたら、きっと多くの人が薬を使った避妊を選ぶかもしれませんね。
しかし、これらのお薬はホルモン剤なので体調などに変化をきたす場合もあることから、メリットとデメリットを十分知った上で使用しなければならないものなのです。
現在日本で使われている避妊薬は2種類あり、いずれも成分は合成黄体ホルモン剤で発情させないようにするためのお薬です。
犬の性周期や飼い主さんの通院都合なども考慮してどちらかを選ぶことになります。もちろん動物病院の都合で薬剤を常備しているかどうかも確認する必要があります。
動物病院では避妊薬そのものを推奨していないところも多いため、まずは実際に話を聞いて確認されることが必要だと思います。
注射薬の使い方は比較的簡単で、無発情期に皮下注射します。約3〜5ヶ月間隔で定期的に打ち続けることで発情抑制状態となり、避妊効果が得られます。
メリットは、皮下注射するだけの簡便さだと思います。また、繁殖させるために発情を元に戻したい場合は注射を止めれば良いのです。
もちろん、投与を中止して発情が戻った場合の繁殖成績は正常であったという実験結果の報告もあります。
インプラント剤は合成黄体ホルモンがシリコンに包まれた物体となっており、外科的に皮膚に埋め込む必要があります。そのために局所麻酔か、場合によっては全身麻酔が必要になるかもしれません。
また、埋め込んだ後は最長2年の発情抑制効果が得られますが、期限を超えた場合は必ず再び摘出する必要があります。
メリットとしては、1回の投与で2年間もの長い間避妊効果が得られることです。しかし個人的には、埋め込みや摘出のタイミング、そして埋め込み期間中の体調チェックなどを考えると心配される要素が多いと感じますね。
上記であげた避妊薬は、いずれも人工的に発情を抑制してしまうため、ホルモンのバランスが崩れやすくなります。それにより、子宮蓄膿症などの生殖器の疾患にかかりやすくなると言われています。
https://www.hikarigaoka.net/298実際に、動物病院にきた犬でインプラント剤などの避妊薬を原因とした子宮蓄膿症を何回も見ています。特にインプラント剤の除去をしないで放っておいた場合などは最も注意が必要です。
薬による避妊は、いずれ子供を産ませたいと願う飼い主さんにはメリットがあると思いますが、子供を産ませる予定のない飼い主さんには手術による永久的な避妊を選択されることをオススメします。
なぜなら薬による避妊方法の管理には、異常を招きやすい体調の変化をこまめにチェックし、病気のサインを見逃さないようにしなければならないからです。