猫を飼い始め、しばらくすると発情の季節がやってきます。 飼い主様にとっては、避妊手術とは言えども可愛い我が子に手術を受けさせるのは悩みの種。 もちろん手術が無事に終わるかどうか心配。 麻酔からちゃんと醒めるかどうかも心配。 数ある心配なことの中で、入院中の様子も心配の一つになるとは思います。 獣医師の意見としても、できるだけ猫は入院を避けるべきだという先生も多くいます。 理由はストレスを非常に受けやすい動物だからです。 ただし、避妊手術とは言えども手術は手術。 不必要な入院は避けるべきだと思いますが、やはり手術となると、術後はしっかりと病院で管理する方がいいという先生も多くいます。 実際、避妊手術後に一晩入院をさせる病院がほとんどだと思います。 今回はわれわれ獣医師の目線から、避妊手術が終わった後、入院させる、入院させない場合のメリット・デメリットを説明したいと思います。
当然のことながら、最大のメリットはやはり、病院の中で術後を管理できることです。 避妊手術のあとに不測の事態になる可能性はほぼないとは思うのですが、もし何らかの状態の変化があった場合にはすぐ対応ができます。 また、通常、入院中はケージレストの状態になるので、しっかりとした安静状態にすることができるので、術後起こるような微細な出血や腫れがより起こりにくくなり、術創の回復も早くなることが考えられます。 また個人的な意見で言えば、術後の猫はいつもと様子が明らかに違っているので、無駄な心配を飼い主様にかけないということもあるとは思います。
一方、デメリットはというと、猫にストレスが多くかかるということです。 猫にとってのストレスが与えるインパクトは非常に大きいものがあり、ストレスがかかった猫は「フリーズ」という状態になり、1週間近く飲まず食わずになることもあります。
特に術後にそのような状態になると、思わぬ状態の悪化を招きますので、できる限りストレスを最小限に抑えることは医学的に言っても非常にメリットがあることだと思います。 また、動物病院によっては24時間しっかりとした看護を設けているところもありますが、ほとんどの場合、夜間は数時間おきの見回り程度にとどめておく場合や、ほぼ無人になることも多くあります。 そんな中で、猫を1晩入院させておくメリットがどれほどあるかと言えば、確かにその通りだとは思います。 もちろん、知らない人間に四六時中監視されているのも相当にこたえるとは思うのですが・・・。
犬に比べ、猫の入院は我々獣医師も非常に悩むケースがあります。 経験的に言えば、ストレスからくるような問題行動が発生しない限りは、避妊手術後に一晩病院に預けるメリットの方が大きいように思えます。 ですが、避妊手術後に入院するべきかどうかは、その猫の性格にも大きく依存することであるので、「絶対にこうしないといけない」と決めつけないで、術後の様子に合わせて臨機応変に対応するべきというのが、私たちの意見です。