甲状腺はのどのあたりに左右1対あり、生命維持に関わるホルモンを分泌している内分泌器官です。
甲状腺腫瘍ではこの甲状腺が大きくなるため、のどにしこりができます。
しこりは左右両方にできることもあれば、片方のみのこともあります。
犬の甲状腺腫瘍はほとんどが悪性の甲状腺癌ですが、猫は多くが良性の腺腫で、甲状腺機能亢進症の原因になります。
目次
1.原因|中高齢で発生が多い
2.症状|のどの腫れやしこり
3.診断|確定診断には組織検査が必要
4.治療|犬は外科手術、猫は内科治療
5.予防|日頃からスキンシップをして早期発見を
甲状腺腫瘍の原因は明らかになっていませんが、犬ではビーグルやゴールデン・レトリーバー、ボクサーに多く、10〜15歳の中高齢で発生する傾向にあるようです。
猫もほとんどは10歳以上で見られることから、犬も猫も加齢が原因である可能性もありますが、実際のところはよくわかっていません。
冒頭でも触れたように、猫の甲状腺腫瘍の多くは良性の腺腫で、中高齢の猫に多く発生する甲状腺機能亢進症の原因になります。
主な症状は、のどのしこりです。
犬はほとんどのケースで腫瘍細胞からホルモンが分泌されませんが、まれに正常な甲状腺が破壊されると甲状腺機能低下症を伴います。この場合は、甲状腺機能低下症の症状として、元気がなくなる、被毛がボサボサになる、皮膚病を繰り返す、急に老け込んだように見える、などが見られます。
ほかにも、腫瘍化した甲状腺がのどを圧迫して、呼吸がしにくくなったり、物を飲み込めなくなったり、鳴き声が変わったりすることもあります。
猫では、甲状腺機能亢進症の症状として、食べているのに痩せる、心拍が早い、毛艶が悪くなり、毛繕いの回数が増えるなどが見られます。
触診で大きさや位置などを確認し、超音波検査で甲状腺の拡大と豊富な血流を確認します。
超音波ガイド下で針を刺して吸引した細胞で細胞診をすることもあります(針吸引細胞診)。
この検査では、外部検査機関に診断を依頼することもありますが、あくまで推定であり、確定診断には手術で摘出した組織を専門機関に送り、組織検査をする必要があります。
ほかにも、血液検査やレントゲン検査、CT検査などで、他の臓器への転移がないかを、ホルモン検査で甲状腺ホルモンの上昇や低下がないかを確認します。
CT検査や超音波検査は、手術計画を立てるうえでも重要です。
犬では、第一選択は手術で、手術のみで摘出できない場合や他の臓器への転移が認められる場合は、放射線治療や抗がん剤治療を併用することもあります。
甲状腺を2つとも摘出する場合は、甲状腺ホルモンが欠乏してしまうため、術後はホルモン剤の内服が必要です。
猫の場合は、甲状腺機能亢進症の治療として抗甲状腺薬の内服を行うことが一般的です。
ただし、根本的な治療は手術で腫瘍化した甲状腺を摘出することで、犬と同じく両方を摘出すると甲状腺ホルモンが不足するため、術後はホルモン剤の投与が必要です。
原因がわかっていないため予防は難しいですが、日頃からスキンシップをしてしこりがないかなどを確認し、早期に発見できるようにしましょう。
甲状腺能亢進症についてはこちらのページでも詳しく解説しています
甲状腺能低下症についてはこちらのページでも詳しく解説しています
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<参考文献>
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