血管輪異常(けっかんりんいじょう)は、胎子期に通常とは異なる位置につくられた血管が食道を巻き込み、食道を狭くする先天性(生まれつき)の病気です。
哺乳中の犬や猫には症状は現れませんが、固形物を食べはじめてから、食べた直後に固形物を吐き出すという特徴的な症状が見られます。
犬ではジャーマン・シェパード・ドッグ、ボストン・テリア、アイリッシュ・セターが好発犬種で、猫ではまれですがシャムやペルシャなどに多いと言われています。
■目次
1.原因|胎子期に起こる先天性疾患
2.症状|飲み込んだ直後に吐く。吐いたものが気管に入ると肺炎も
3.診断|造影レントゲンで狭窄した食道を確認
4.治療|根治には手術が必要
5.予防|子犬や子猫の吐き戻しに注意!
血管輪異常は、胎子の時期に発生する先天性の奇形で、通常にはない位置につくられた血管が食道を巻き込んで外側から圧迫します。
血管輪異常の多くは右大動脈弓遺残で、ほとんどは血行のない動脈管索ですが、まれに血行が残っています。
食道が狭められているものの液体は問題なく通すため、ミルクのみを食道に通している哺乳期には、何の症状も見られません。
しかし、離乳して固形物を食べ始めると、食べたものを直後に吐くといった特徴的な症状が見られます。
食欲はあるものの、うまく食事を取れないため、兄弟犬や兄弟猫よりも発育が遅れる可能性があります。
ただし、食道が狭められている程度にも差があり、軽症であればある程度の大きさまでは問題なく飲み込めるため、発見が遅れるケースもあります。
吐いたものが気管に入り誤嚥性肺炎を起こすと、咳などの症状が現れます。
造影剤を口から入れて胸部の造影レントゲン検査を行うことで、食道の狭窄位置と、それ以前での食道の拡張が確認できます。
また、CT検査では、血管輪や周辺の構造などを詳しく調べることができます。
根治には、食道を巻き込んで狭めている血管輪を外科手術で取る必要があります。
食道の拡張が重度であるほど、術後に吐き戻しの症状が残る傾向にあるため、可能な限り早期の手術をお勧めします。
食事療法も重要で、狭くなった食道を通過できるよう形状を工夫したり、食べ物が通過しやすいよう、テーブルなどに足をつかせ立たせた状態で食べさせたりします。
血管輪異常は先天性の病気であるため、残念ながら予防することはできません。
術後の経過を考えると、早めの手術による治療が望まれますので、離乳後に固形物を吐き出すなどの症状が見られたら、お早めに受診してください。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
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Krebs IA, Lindsley S, Shaver S, MacPhail C. Short- and long-term outcome of dogs following surgical correction of a persistent right aortic arch. J Am Anim Hosp Assoc. 2014 May-Jun;50(3):181-6.